「むの字屋」の屋号について

日本酒庵「むの字屋」の屋号の由来はこうである
 庵主の苗字は村松という。この村松という姓がクセモノなのである。どういうわけか、よく「まつむら」と読まれる。ほら、ひょっとして「まつむら」でいいんじゃないかと思われた方はいませんか。庵主の苗字は「むらまつ」である。
 だから、「む」の字が先で、「むらまつ」ですよという意味からつけたのが「むの字屋」である。「むの字屋」の「むらまつ」ですといえば、「まつむら」でなく「むらまつ」だと印象づけられるだろうという思いによる。
 そういえば、「ほの字」とか「けの字」というお店を見たことがあるが、「むの字屋」はまだ見たことがない。当庵の長いURLを教えなくても、ホームページの検索ソフトで「むの字屋」を探してもらえばすぐにたどりつけるので唯一無二というのはなにかと便利である。

「むの」は「呑む」に通じる
 ダフ屋という言葉がある。野球場とか人気スターの公演などで入場券を高く売りつける商売のことである。そのダフ屋のダフがどういう意味なのか庵主は長いことわからなかった。ズージャ歌手と同じだと聞いて納得した。ズージャとは音楽関係の人が使う隠語でジャズのことである。ジャズをひっくり返してズージャである。それでわかった。ダフ屋は札屋(フダや)なのである。
 その伝でいえば、「むの字屋」の「むの」はさしずめ「呑む」が語源になるというわけで、たしかにお酒にふさわしい屋号だとはあとになって気がついたことである。

「む」はまた「無」の境地である
 もっとも本当のところは庵主には何にもないから「無」の字屋なのである。酒も呑んでしまえばなくなる「無」の世界であるから心は通じているところがあるのかもしれない。