むの字屋辞典

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◆ る ◆

るび【ルビ】印刷用語。簡単にいえば振り仮名のこと。
主な行の横に添える、読み方とか注釈などのこと。小さい活字を使って組まれる。

ルビは、ただ単に文字の読み方を示す振り仮名として使うだけにとどまらず、それを活用すると文章の意味を多重化する手段として使うことができる。
ルビを使えば、日本語では一つの言葉に二重、三重の意味をもたせることができる。

ルビの通常の遣い方は、振り仮名として使うものである。
たとえば、「脆弱」の横にその読み方である「ぜいじゃく」とルビを振る場合である。
「むの字屋」では、ルビの部分を〈 〉で表示している。
活字で組んだときにはその部分はルビになるということである。
「獺祭〈だっさい〉」、「雪の茅舎〈ゆきのぼうしゃ〉」と振る。

ルビの二つ目の遣い方は、漢字の読み方に辞書に載っている標準的な読み方ではなく独特の読み方を振るものである。
一つの言葉に二重の意味を持たせるものである。
国際〈はんかくさい〉、天才〈うさんくさい〉という使い方である。
国際協調などと、国際という言葉に高い価値を持たせている人はどこか奇怪しいという庵主の評価を込めて「国際」という言葉を使っているという意味である。
「国際連合」にはあえてそのルビを振らないのは、国連のいかがわしさは常識だからである。

創価学会が発行している「聖教新聞」のコラム「寸鉄」がルビを活用している。
字数の制約が厳しいコラムに大量の情報を詰め込むことに成功している。
「南米〈アルゼンチン〉で情熱の平和文化祭
会長〈SGI〉が青年育成〈いくせい〉に全人生〈ぜんじんせい〉
をかけてきた結晶−闘士〈エスキベル〉」(2010年3月6日記事)
(注)その日の一面記事を要約したものである。
「南米」の〈アルゼンチン〉とあるのは、アルゼンチンでSGI(創価学会インタナショナル)の平和文化祭が行なわれたというもの。
会長とは池田大作SGI会長のこと。
闘士に〈エスキベル〉とあるのは、三十数年前にアルゼンチン軍事政権に抵抗した闘士だったというエスキベル博士の名前である。詳細は同記事に書かれている。
長い新聞記事をルビを使うことでたった3行にまとめてしまうことができるという実例。
1字の無駄もない詰め込み方は見事である。
ただ、「寸鉄」ではその技〈わざ〉が悪口に使われることがあるから惜しい。
その場合のルビは、書き手の品格をも投影してしまうから、後述する三重の意味をもったルビである。ルビは恐いのである。

ルビで、一つの言葉に三重の意味をもたせた実例は、「突撃一番〈てつかぶと〉」である。
「突撃一番」と書いて〈てつかぶと〉とルビを振って、その意味するところはあからさまには書かないが、分かっている人にはご存じの通りというものである。


 

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