いま「むの字屋」の土蔵の中にいます

 うまい酒はここにある
 いま(平成12年度データー)日本酒を造っている蔵元の数は約1500蔵である。
 毎年数十の蔵が造りをやめている。確実に減りつつあるのである。というのも呑まれる日本酒の量がどんどん減っているからである。かといって酒を呑め呑めとすすめるのは時代に逆行する蛮行である。
 いま煙草喫(の)みがその習慣は時代錯誤であると指弾されてせつない思いを強いられている。
 公共の建物の中を始めとして室内では煙草を吸うなであり、じゃあ外に出て吸おうとすると道路では喫煙禁止で罰金を取るとくるのだから、嫌がらせの極に達しているのである。煙草をやめられない人間は意志の弱い駄目な人間として刻印が押されようとしている。
 酒を呑むことも同様に指弾の対象になる弊風なのである。もっとも禁酒法についてはどこかのアホな国が実際にそれをやって早いうちにその間違いに気づいて悔い改めたという前例があるから押しきられることはないにしても、とある勢力の悪意はそれを承知の上でゴリ押ししてくることは火を見るより明らかである。酒も煙草も「わかっちゃいるけどやめられない」ものなのである。
 さて、少なくなったとはいえ1500を数える蔵元のお酒を一つのお店で全部呑むことはできない。だから、あの銘柄はこの店で、また別の銘柄はあの店でと、その銘柄のいいお酒は酒を知っているお店にいかないのと呑めないのである。そういうお店に出会ったときは庵主はうれしい。そのうれしさをお福分けしたい。


★神楽坂のたまねぎ屋★15/9/11
 地下鉄神楽坂駅の飯田橋よりの出口から出る。
 飯田橋方向に向かって最初の道を左に曲がってまっすぐ進むと正面に赤城神社がある。
 左を見ると居酒屋の加賀屋がある。
 加賀屋のほうに曲がって、最初の別れ道を右に曲がって下っていく。路面にすべりどめの ○ の彫り込みがある道を下るのである。
 下っていくと別れ道がある。角に「赤城坂」と書かれた標識が立っている。その別れ道の左側を行くのである。
 まっすぐ進みながら、右側の道路の数えて5本目の角にコインランドリー(洗濯屋)がある。その角を右に曲がってすぐ右手に「たまねぎ屋」がある。
 はでな照明のお店でないので見落とさないように。
 酒は、「義侠」「初亀」「磯自慢」「東一」「松の司」などである。それもいちばんおいしいところを揃えている。
 だまってカウンターにすわって目をつぶってお酒をたのんでも納得できるお酒が出てくる。そういうお店である。
 「義侠」の「妙」(たえ)もここでなら呑める。
 お酒が判らないときは店主に聞くことである。店主の酒の知識は深い。その知識の一端を耳にするだけでも電車賃をかけて呑みにいく価値があるお店である。


★三軒茶屋のでり坊食堂★17/3/11
 東急なんとか線の三軒茶屋駅の北口から出る。北口の出口は右と左に別れているが左の方から出る。
 地上に出ると、目の前に道路をはさんで向かい側の角にある靴屋Ciyodaが見える。その前の三茶しゃれなあど通りにはいる。
 しばらく行くと左手にイトーヨーカ堂が見えてくるが、さらに前進する。
 やがて、最初の十字路にぶつかる。ここまで徒歩約5分である。
 その十字路を渡って右手の角にあるのが「でり坊食堂」である。ここがお薦めのお店である。
 食堂なのだが、日本酒の揃えがいいのである。しかも、1/2合で315円なのである。もちろん1合なら630円である。2合で頼むとちょっと割安になっている。
 しかも、酒祭りに載っているお酒がおみごとである。
 田酒純米、天の戸純米、出羽桜吟醸桜花、飛露喜吟醸などがあって、さらに天界、天寳一、正義櫻、南とある。全部で20種類も並んでいたから、庵主にはそれ以上くわしいことは覚えられなかった。
 そのどれもが呑みたくなる酒ばかりである。この揃えは魅力的である。しかも一律315円で呑ませてくれるというのがうれしい。
 五勺で315円だから1升の売上は6300円である。妥当なところだろう。必ずしも安くはないが五勺で315円というのは庵主には安く感じるのである。だからついもう一杯呑んでみたくなる。
 どこの食堂でもいいお酒が一杯315円で呑むことができたら幸せこのうえないのだが、近くに「でり坊食堂」があれば、毎晩通いたいほどである。
 食事時に315円でうまいお酒が呑めることの幸せを一度感じていただきたいと思う。


★銀座の庫裏★17/5/5
 麻布の、駅から歩くには不便な場所にあった「庫裏」(くり)が銀座に引っ越してきた。
 新しい場所は数寄屋橋通りの6丁目、外堀通り側にあるビルの2Fである。
 と書いても、銀座が不案内の人にはわからないだろうから、もっと細かく書くと、地下鉄の銀座駅で降りて東芝ビルをめざす。
 芝ビルの裏の通りが数寄屋橋通りである。高速道路寄りの通りである。東芝ビルの裏からその通りを新橋方向に向かって歩く。道を一本渡ったところが6丁目である。通りの左側のビルを見ていくと「庫裏」の看板が路上に出ている。お店は2階である。
 
 「庫裏」のいいところは、いろいろなお酒が小グラスで呑むことができるということである。小グラスは60ミリリットルである。沢山呑める人は120ミリリットルの中グラスがある。もっといっぱい呑みたい人のための180ミリリットルの大グラスもある。
 庵主は量が呑めないのでもちろん小グラスである。小グラスなら250円前後で呑める。

 ここは酒販店がお酒のテイスティングをしてもらうためにやっているお店なので、置いてあるお酒の種類は多い。
 だからまだ呑んだことがないお酒をちょっと味わってみるにはちょうどいいのである。
 ただし、酒の肴はそれほど多くはないから料理で酒を呑むお店ではない。とはいえ変わった肴があるから一度は行ってみる価値があるお店である。
 銀座でいいお酒をちょっとだけ呑みたいときには重宝なお店である。